65歳以降も再雇用で働くなら年金は繰下げで増える? 増えるのは1か月0.7%、ただし在職老齢年金で止まる分は増えません。国の資料で確かめました

わたしは2027年2月に60歳で定年を迎え、同じ会社に再雇用で残ることが決まっています。会社の決まりでは、嘱託は1年ごとの更新で70歳まで、その先も延ばせる道があります。わたし自身、「70歳まで会社に残る」という案も考えています。まだ決めてはいません。
65歳を過ぎても給料があるなら、年金は受け取らずに待って増やせばいい。そう考える人は多いと思います。
ところが調べてみると、働きながら待つと、増え方が変わることが分かりました。決める前に、日本年金機構の資料で確かめた記録です。
65歳以降も働くなら、年金は「待って増やす」のが得なのか
年金を65歳より後に受け取り始めて、額を増やす仕組みを「繰下げ」といいます。
前回は、反対に60歳から早く受け取る「繰上げ」を調べました。繰上げは1か月0.4%減って、その減額が一生続きます。くわしくは再雇用で働きながら60歳で年金を繰上げると? 減額は一生・取り消せない・高年齢雇用継続給付で一部が止まるにまとめました。今回はその裏側です。2本で、60歳から75歳までの「いつから受け取るか」がそろいます。
この記事で見るのは、65歳以降も厚生年金に入って働き続けながら、繰下げるときの話です。得か損かは、日本年金機構の資料には書かれていません。だから、わたしも書きません。
繰下げは66歳から75歳まで。1か月0.7%、最大84%増えて一生続く
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、65歳で受け取らずに、66歳以後75歳までの間で繰り下げて、増額した年金を受け取ることができます。増え方は次のとおりです。
増額率=0.7%×65歳に達した月から繰下げを申し出た月の前月までの月数(最大84%)
そして、この増額率は一生変わりません。
日本年金機構の早見表では、請求したときの年齢ごとに次のようになっています。
| 請求したときの年齢 | 増額率 |
|---|---|
| 66歳 | 8.4% |
| 67歳 | 16.8% |
| 68歳 | 25.2% |
| 70歳 | 42.0% |
| 75歳 | 84.0% |
(日本年金機構「年金の繰下げ受給」の早見表から抜き出しました。昭和27年4月1日以前に生まれた人などは、上限が70歳・最大42%です)
75歳に達した月を過ぎてから請求しても、増額率はそれ以上増えません。
働いて止められている分は、待っても増えない
ここが、再雇用で働く人にいちばんかかわる話です。
65歳以降も厚生年金に入って働く人は、給料と年金の額によっては、老齢厚生年金の一部が止まります。これを在職老齢年金といいます。日本年金機構の資料では、こうです。
- 年金の月額(基本月額)と給料(総報酬月額相当額)の合計が65万円以下なら、全額出ます
- 65万円を超えると、次の額になります:基本月額−(基本月額+総報酬月額相当額−65万円)÷2
- 止まるのは老齢厚生年金だけです。老齢基礎年金は全額出ます
この65万円は令和8年度の基準額で、令和8年4月に月51万円から引き上げられました。毎年度、賃金の動きに合わせて改定されます。
そして、繰下げのページにはこう書いてあります。
65歳以後に厚生年金保険に加入していた期間がある場合などに、在職老齢年金制度により支給停止される額は、増額の対象になりません。
つまり、待っている間に「もし年金を受け取っていたら、働いているために止められていたはずの分」は、0.7%の増額に入りません。繰下げの増額は、止められていない部分にだけかかります。
ここからは、わたしの読みです。給料が高くて止められる額が大きい人ほど、待っても増える額は小さくなることになります。合計が65万円以下で止められる額がゼロなら、この話は関係ありません。わたしの65歳以降の給料はまだ分からないので、どちらになるかは書けません。
待っている間は年金がゼロ。加給年金・振替加算も出ず、増えもしない
繰下げで待っている間は、その年金は受け取っていません。日本年金機構の資料には、注意点として次のように書かれています。
- 加給年金額や振替加算額は、増額の対象になりません
- 繰下げで待っている間(年金を受け取っていない期間)は、加給年金額や振替加算を受け取ることができません
ほかにも、次のような注意書きがあります。
- 66歳以後の待っている間に、遺族年金などほかの公的年金を受け取る権利ができると、その時点で増額率が固定されます。そのあと手続きを遅らせても増えません
- 繰下げで増えた分は、遺族厚生年金には反映されません
- 年金生活者支援給付金、医療保険・介護保険の自己負担や保険料、税金に影響する場合があります
基礎年金と厚生年金は、別々に繰下げられる
繰上げは、原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金をいっしょに請求します。繰下げは違います。老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に繰り下げることができます。どちらか一方だけ繰り下げることもできます。
ここで、さきほどの在職老齢年金の話とつながります。働いて止まるのは老齢厚生年金だけで、老齢基礎年金は全額出ます。
わたしが持ち帰ったのは、「止まる側(厚生年金)」と「止まらない側(基礎年金)」を分けて考えるということです。どちらを待てばいいかは、国の資料には書かれていません。わたしも、どちらがいいとは書きません。
決めずに70歳を過ぎたら? 5年前にさかのぼる「みなし増額」と、待ったまま亡くなったとき
繰下げのつもりで65歳で請求せずにいても、実際に請求するときに繰下げを申し出ずに、65歳からの本来の年金をさかのぼって請求することもできます。
このとき、70歳に到達した日の後にさかのぼって受け取ることを選ぶと、請求の5年前の日に繰下げの申し出があったものとみなして、増額された年金を一括で受け取ることになります。日本年金機構はこれを「特例的な繰下げみなし増額制度」と呼んでいます。
- 対象は、昭和27年4月2日以後に生まれた人など
- 80歳以後に請求する場合や、請求の5年前の日以前から障害年金や遺族年金を受け取る権利がある場合は、適用されません
- 過去の分をまとめて受け取ることで、さかのぼって医療保険・介護保険の自己負担や保険料、税金などに影響する場合があります
もう1つ、重い注意書きがありました。
- 繰下げの請求は、遺族が代わって行うことはできません
- 待っている間に亡くなった場合、遺族が未支給年金を請求できるときは、65歳時点の年金額で決めたうえで、過去の分が一括で支払われます
- ただし、請求した時点から5年以上前の年金は、時効で受け取れなくなります
待っている間に増えていたはずの分は、本人が請求しないかぎり、つかないということです。
手続きは66歳以降に請求書を出すだけ。わたしが確かめること
繰下げを希望する人は、66歳以降で受け取りたい時期に、請求書を年金事務所か街角の年金相談センターへ出します。増額率は、手続きをした時点で決まります。
年金を受け取っていない人には、66歳から74歳までの間、毎年「繰下げ見込額のお知らせ」が届きます(共済組合などに入っていた期間がある人は、66歳と70歳のときに別のお知らせ)。75歳になる人には、年金請求書が届きます。
わたしが決める前に確かめることは、3つだと考えています。
- ねんきん定期便の見込額(65歳時点の額。基礎年金と厚生年金を分けて見る)
- 65歳以降の再雇用の給料(在職老齢年金で止まるかどうかが、ここで決まる。まだ分かりません)
- 会社に70歳まで残れるか(嘱託の更新の条件)
【PR】この3つがそろっても、繰下げるか、何歳まで待つか、基礎と厚生のどちらを待つかの見通しを、自分ひとりで立てるのは難しいと感じています。給料で止まる額も、待っている間の生活費をどこまで給料でまかなえるかも、いまのわたしには計算しきれません。決める前に、お金の見通しを外の人に一度見てもらうのも手段の一つだと思っています。ただし、相談したからといって正解が決まるわけではありません。わたしもまだ相談していません。使ったら、実測としてここに書きます。※リンク先は、保険の見直しを中心にした無料相談です(1〜2時間の面談があります)。
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あわせて読む
- 60歳から再雇用で払う厚生年金は、65歳からの年金を増やすのか。増えるのは厚生年金だけで、基礎年金は増えません — 待つ間も働けば、もとの年金額そのものが増える側の話はこちら
- ねんきん定期便の額は手取りではありません。65歳から年金で引かれる介護保険料・住民税・所得税 — 繰下げで増えた額も、額面からさらに引かれるものがあります
まとめ
- 年金は66歳から75歳までの間で繰り下げて、増額して受け取れる
- 増額率は1か月0.7%、最大84%(75歳)。一生変わらない
- 65歳以降も厚生年金に入って働くと、在職老齢年金で止まる額は増額の対象にならない(合計65万円・令和8年度)
- 待っている間は年金がゼロ。加給年金・振替加算も出ず、増額の対象にもならない
- 老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げられる。働いて止まるのは厚生年金だけ
- 70歳を過ぎてさかのぼって請求すると、5年前に申し出たものとみなして増額(80歳以後は対象外)。繰下げの請求は、遺族が代わってはできない
- わたしの65歳以降の給料は、まだ分からない。決めるのは、見込額と給料と会社の条件がそろってから
この記事で使った資料
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」(更新日2026年8月12日) https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」(更新日2026年4月1日) https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.html
- 日本年金機構「66歳以後に老齢年金の受給を繰下げたいとき」(更新日2026年6月15日) https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/rourei/seikyu/20140421-31.html
- 日本年金機構「老齢年金の繰下げ受給を希望している方へのお知らせ」(更新日2026年10月1日) https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/rourei/seikyu/kurisage.html
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」(更新日2024年8月19日・繰上げの0.4%と同時請求の比較だけ) https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-01.html
決まりと数字は、すべてこの5つの資料から引きました。個人の解説記事・動画は、論点を探すためだけに使い、根拠にはしていません。
書いた人:物流の仕事を38年続けている会社員です。配車の仕事を漫画にしました。
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