役職定年の実測ノート

役職定年で何が起きるかを、実測の数字と当事者の一次情報で。

定年後に年の途中で辞めたら、所得税は確定申告で取り戻す。年末調整されない理由と「5年以内」の期限を国税庁で確かめました

年の途中で辞めて再就職しないなら確定申告で精算。所得税は年末調整されない。取り戻す期限は翌年から5年

わたしは2027年2月に60歳で定年を迎え、同じ会社に再雇用で残ることが決まっています。

再雇用のあと、最後に会社を辞める時期は、64歳11か月を第一候補にしています(理由は前の記事に書きました)。64歳11か月で辞めると失業保険はどう変わる? 65歳の前と後で「150日分」と「50日分」に分かれる線を国の資料で確かめました

そうすると、その年は年の途中で給料が止まります。毎月の給料から引かれていた所得税は、その年、誰が精算するのか。国税庁のタックスアンサーと所得税法の条文で確かめた記録です。

最後に辞める年、所得税は誰が精算するのか

先に結論を書きます。

  • 毎月引かれる所得税は概算です。ふだんは会社の年末調整で1年分を精算しています
  • 年の途中で辞めて、その年に再就職しないと、年末調整を受けられません。所得税が納め過ぎになっている場合があります
  • 取り戻すのは、辞めた年の翌年1月1日から5年間に出す確定申告(還付申告)です。3月15日の期限とは別です
  • 申告に使う源泉徴収票は、辞めた日から1か月以内に会社が渡す決まりです

定年の手続きの締切を一覧にしたとき、この「年の途中で辞めた人の確定申告」は国の資料でまだ確かめていなかったので、別の記事に回していました。定年の手続き、締切はいつまで? 退職日から逆算した一覧表。今回はその続きです。

毎月引かれる所得税は「概算」。年末調整で1年分を精算している

国税庁のタックスアンサー(No.1910)では、こう説明されています。

  • 給料やボーナスから毎月引かれる所得税(復興特別所得税を含む)は、概算で引かれている
  • なので、引かれた合計は、その人が1年間に納めるべき税額と必ずしも一致せず、過不足が出る
  • その過不足を、年末調整で精算する

また、No.1900では、大部分の会社員は、会社の年末調整で所得税額が確定し、納税も終わるので、確定申告は要らない、とされています。

会社員のあいだは、所得税の精算を会社がまとめてやってくれていた、ということです。

年の途中で辞めると、年末調整の対象から外れる

では、年の途中で辞めた人はどうなるか。国税庁のNo.2665に、年末調整の対象になる人が書いてあります。

  • 12月に行う年末調整の対象は、1年を通じて勤めている人と、年の途中で就職して年末まで勤めている人
  • 年の途中で行う年末調整の対象は、次の5つのどれかに当たる人
  • 海外への転勤などで非居住者になった人
  • 死亡によって退職した人
  • 著しい心身の障害のために退職した人(退職後に再就職して給与を受け取る見込みのある人は除く)
  • 12月の給与を受け取った後に退職した人
  • パートタイマーなどで、その年の給与の総額が136万円以下の人(退職後その年に他の勤め先から給与をもらう見込みのある人は除く)

この5つに当たらない人は、年の途中で辞めると、年末調整の対象になりません。

5つ目は「パートタイマーなど」と書かれていて、再雇用で働いた人が入るかは、この資料からは決められませんでした。わたしの第一候補の64歳11か月だと、辞める年の給料は年の初めの分だけになります。辞める月や給料の額によっては当たることもありうるので、辞める前に会社に確かめます。

同じ年に再就職したら、新しい勤め先がまとめて精算する

辞めた同じ年に再就職した場合は、話が変わります。

No.1910では、原則として新しい勤め先が、前の勤め先の給与も含めて年末調整をするので、納め過ぎは解消する、とされています。

そのとき、新しい勤め先は、前の会社からもらった源泉徴収票で、前の給与と引かれた税額を確かめます(No.2674)。この確認ができないときは、年末調整はできず、本人が確定申告で精算することになります。

つまり、確定申告の側に残るのは、主に「年の途中で辞めて、その年に再就職しない人」と、「再就職したが前の源泉徴収票が出せなかった人」です。定年後の最後の退職は、前の側になる人が多いと思います。

再就職しないなら、翌年に還付申告。期限は5年

再就職しない場合の取り戻し方を、No.1910とNo.2030から表にしました。

項目 中身
いつから 辞めた年の翌年1月1日から
いつまで 5年間
何を出すか 確定申告書(還付申告書)
どこへ 出すときの住所地を担当する税務署(所轄税務署)
どうやって 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、画面の案内に沿って入力すれば、家で作って出すこともできる

(国税庁 No.1910・No.2030 から。わたしの要約です)

大事な点が3つあります。

  • 3月15日の期限とは別です。No.2030では、還付申告は確定申告期間とは関係なく、翌年1月1日から5年間出せる、とされています(青色申告特別控除など、3月15日までの提出が条件になっている特例を使う場合は別です)
  • No.1910は「早めに」と勧めています。5年以内なら出せるが、添付書類がそろい次第、早めに、という書き方です
  • 必ず戻るわけではありません。No.1910の言い方は「納め過ぎとなっている場合があります」です。No.2030では、源泉徴収票の源泉徴収税額が0の人は、申告しても還付される所得税はない、とされています

いくら戻るかは、その年の給料や控除で変わります。目安の額は、国の資料には書かれていません。

用意するのは源泉徴収票。辞めて1か月以内に会社が渡す決まり

還付申告に使うのは、会社が出す源泉徴収票です。

所得税法の第226条第1項には、給与を払う会社は、源泉徴収票を作って本人に渡さなければならない、とあります。渡す時期は、ふだんは翌年1月31日までですが、年の途中で退職した人には、退職の日以後1か月以内です。本人が承諾していれば、紙ではなくデータで渡すこともできます(同じ条の第4項)。

辞めて1か月たっても届かなければ、会社に頼む、と覚えておくことにします。

ここで2つ、一緒に確かめたことがあります。

  • 失業保険には所得税がかかりません。雇用保険法の第12条に「租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない」とあります。基本手当(いわゆる失業保険)も、65歳以降の高年齢求職者給付金も、この失業等給付の1つです(同じ法律の第10条)。なので、辞めた年に失業保険をもらっても、その分を収入に足して申告する必要はない、とわたしは読んでいます
  • 65歳から年金が始まった年は、別の線があります。国税庁のNo.1600では、公的年金等の収入が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下なら、確定申告は要らない、とされています。ただし、還付を受けるための申告はできます。住民税の申告が要る場合がある、とも書かれています。なお、年金が始まった年に給料もあれば、その給料は「年金以外の所得」の側に入るので、20万円以下に収まらないことが多いと思います(ここはわたしの読みです)

辞めた年の税金のもう片方、住民税は前の年の所得で決まる別の仕組みです。こちらは前の記事で確かめました。住民税は前年の所得で決まる。定年後に辞める時期で払い方が変わる(1〜4月は一括・6〜12月は自分で納付)を総務省と地方税法で確かめました

わたしが確かめること

わたしの最後の退職はまだ先ですが、次の順で確かめておきます。

  1. 2027年2月の定年→再雇用の年に、会社がいつもどおり12月に年末調整をしてくれるか。国税庁の資料には「1年を通じて勤務している人」とあるだけで、定年退職して同じ会社に再雇用される年がどう扱われるかは、わたしは国の資料ではまだ確かめていません。会社の給与の担当に聞きます
  2. 最後に辞める月が決まったら、その年に再就職するか・しないかを先に決める。しないなら、翌年1月以降に還付申告する予定を手帳に入れる
  3. 辞めて1か月たっても源泉徴収票が届かなければ、会社に頼む。失業保険の手続きで使う離職票とは別の紙だと覚えておく

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あわせて読む

まとめ

  • 毎月引かれる所得税は概算。ふだんは会社の年末調整で1年分を精算している
  • 年の途中で辞めると、5つの例外を除いて年末調整の対象から外れる
  • 同じ年に再就職すれば、新しい勤め先が前の給与も含めて年末調整する(前の源泉徴収票が要る)
  • 再就職しないなら、翌年1月1日から5年間に確定申告(還付申告)を出す。3月15日の期限とは別
  • 必ず戻るわけではない。源泉徴収税額が0なら還付はない
  • 源泉徴収票は、辞めた日から1か月以内に会社が渡す決まり。届かなければ会社に頼む
  • 失業保険には所得税がかからない(雇用保険法第12条)

この記事で使った資料

  • 国税庁 No.1910「中途退職で年末調整を受けていないとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1910.htm
  • 国税庁 No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
  • 国税庁 No.2665「年末調整の対象となる人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2665.htm
  • 国税庁 No.2674「中途就職者の年末調整」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2674.htm
  • 国税庁 No.2030「還付申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm
  • 国税庁 No.1600「公的年金等の課税関係」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm
  • 所得税法 第226条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
  • 雇用保険法 第10条・第12条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116

決まりと数字は、すべてこの資料から引きました。国税庁のタックスアンサーは「令和8年4月1日現在法令等」の版で、2026年11月3日に確かめました。個人の解説記事・動画は根拠にしていません。いくら戻るかは人によって違うので、自分の場合は税務署や国税庁の確定申告書等作成コーナーで確かめてください。

書いた人:物流の仕事を38年続けている会社員です。配車の仕事を漫画にしました。
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